学校給食

多治見市食育センター 様

1300年の伝統ある美濃焼の産地として知られている多治見市は、教育の一環としての「食育」を実施しており、幼児期から食の大切さを伝えるため学校給食の充実を図っています。今回ご紹介するのは、令和3 年8月に開設した「多治見市食育センター」です。

食育の大切さをさまざまな視点から伝える“食育センター”

「食育は教育の1 丁目1番地」を軸に、幼児から中学生まで食の大切さをさまざまな視点から伝えるため、給食センターではなく“食育センター” と名付けました。温かみのある外観で、施設内には地元産のタイルをふんだんに使用し、多治見市らしさを散りばめた空間が魅力です。1階は、作業によって区域を明確化している事はもちろん、風除室を設けた入荷口や、生野菜専用の下処理室と上処理室、セレクト給食に対応する多目的調理室を設けるなど随所に工夫を施しています。2 階は食育エリアとして、調理場見学エリアや、多治見市の食育の歴史展示、調理実習室などを設けています。

衛生管理、作業効率向上はもちろん
「料理の一手間」を加えた“おいしい”が提供できる施設。

1日5000食(炊飯6,300食) の給食を調理する事が可能な1階の調理エリア。HACCP を導入し、高い衛生基準を確保した運営を行なっています。魚や肉、野菜を入荷する荷受室の前に「風除室」を設ける二重構造にしてホコリや飛来虫の侵入を確実に防止する衛生的な入荷が可能に。「煮炊き調理室」には、主菜、副菜、汁物、炊き込みご飯の具や、肉や魚にかけるソース等を調理するための11機の釜を設置しています。また釜を一直線に設けることで、作業効率の向上にもつながっています。「揚物・焼物・煮物調理室」では、献立に合わせて色々と調理できるよう、連続式焼物機とスチームコンベクションオーブンを使い分けています。「炊飯室」では、美味しいご飯を安定的に炊くため連続炊飯機を導入。炊飯釜専用の消毒保管機も設置し、洗浄後の炊飯釜の乾燥・熱風消毒が実現しました。「多目的調理室」では、セレクト給食を調理します。セレクト給食は、事前に園児児童へ向けて栄養教諭等が栄養バランスなどについて指導をおこない、自分に必要な量や栄養素を学習した上で給食を選択し、それに基づいて提供する給食です。卒園・卒業前に実施する場合が多く、園や学校での食育のまとめとなるものです。その他、小学校で栽培したさつまいもの活用や、地元のイチゴを使ったジャムの調理など新しい取り組みへの実践にも使われています。

新調理場の施設見学や企業と連携した食育講座など、
食について深く学べる場所

2階は食育エリアとして、調理場見学や展示エリア、研修室・調理実習室を設けています。1階にある調理場を見学できるエリアでは、野菜類の下処理や煮炊き調理などの調理風景を見ることができます。ここでは、市内の公立小学校3年生を対象に施設見学も行なっており、子どもたちが実際に食べる給食がどのように調理されているのかを見ることができます。見学窓から見ることができない調理工程を見られるように大型モニターも設置。調理員が一生懸命給食を作る姿に子どもたちも感動!調理員に手を振ったり、「頑張れ」と声援を送ったりする姿も見受けられます。その他、「調理実習室」や「研修室」では、企業とコラボレーションした出前講座を実施しており、食育をトータルで体験できます。

「多治見市学校給食における6つのねらい」を軸に、
安心安全な学校給食を子どもたちに提供

学校給食を教材として、食に関する正しい知識や食を選択する力を身につけられるようにと、学校給食における6つのねらい(上記参照) を軸にしている多治見市。献立もこの6つのねらいをもとに考えています。食材選びも重要で、栄養教諭等が全員で食材を見て実際に調理し、どんな調理方法やどんな切り方であればより美味しく食べられるかを常に考えながら、一つ一つ丁寧に食材へ向き合い献立を決めています。煮干し、かつお、昆布など天然のだしを使った日本ならではの食生活を伝える献立や東濃地方の伝統的なごちそう、「味ご飯」などの郷土料理も提供しています。また、岐阜県は海に面していないため県産のあゆやあまごなどの川魚を甘露煮やから揚げにして、魚の姿がわかる料理を工夫して取り入れています。美濃焼などの地元産業への理解と愛着を育み食文化の大切さを伝えたいとの思いから強化磁気食器を昭和62年から使用しています。料理を盛りつけたときのバランスやどんな料理にも調和する絵柄であると同時に、給食の楽しさも演出してくれるデザインで、食育の観点からも料理における器の大切さを感じさせてくれる器です。

未来へとつながる「食育」を次世代にもつなげ続ける

多治見市は、子どもたちに食の重要性を伝えるため、学校給食を活用した食育を実践しています。便利なものが溢れ、食に関する価値観が多様化しています。また、食材の安定的な供給が当たり前ではなくなってきました。こんな時代だからこそ、手作りの良さを知り、自ら食を選びとることを子どもたちにも学んでほしい。そのために、長年の伝統を引き継ぎ、時代のニーズに合わせた新しい挑戦も加えながら、次世代に向けて“食の大切さ” を繋げていきたいと考えています。

[ 取材日] 2023年8月

名 称:多治見市食育センター
所在地:岐阜県多治見市姫町6-1-10
竣 工:2021年6月
食 数:5,000食(炊飯:6,300食)
配送校:中学校3校、小学校5校、幼稚園2園(2021年8月時点)